2023-11-29

まほう

 


一回くらいしか行ったことのなかった近所の喫茶店に、最近ふと…、すごく行きたくなって行ってきた。店主のご婦人は、記憶よりもずっと上品できれいだった。レースのブラウスに水色のカーディガンを羽織って、ブローチがぴかっと光った。
窓から柚子の木が見えて、私の席に置かれたコップの底が、緑に反射してきらめきゆれていた。  机にはカーネーションが飾られていて、茎が痛んで折れてしまった(あるいは手入れした)のであろうみじかい一輪は、お手洗いにちいさな花瓶にちょんとさして飾られていてかわいかった。
この店は、時間の層が重なりがきれいだ。
私はその日、普段飲まないロイヤルミルクティーと、ジャムトーストを注文した。
 
重い扉をひらいた先のこの空間は、全部が魔法にかかっているみたい。
私は(どうかこの魔法が、ずっととけませんように)と思った。
それは、とても大切な気付きだったような気がする。
かたちがなくなっても 忘れちゃって思い出せなくなっても、心はずっと魔法にかけられたまま生きる。

2023-11-20

ダブルラリアット


いろいろあって、今日は税務署を自転車ではしごして開業届を提出してきた。
開業日は遡ってもよいとのことで、猫が亡くなった日にさせてもらった。
これで、例えば私がなにかで捕まったときには、無職じゃなく表示されるってことなんだろうか。
違う?
今年帳簿などまったくつけていなかったので(来年からはちゃんと勉強して、できるだけちゃんとやらないといけない、ということがよーやっとわかった)、年末にむけ、1年間の領収書やらお金の動きやらを整理している。
シミュレーションしてみると、白じゃなくて青にするだけでこんだけおさめる税金が少なくなるんだというのが分かる。じゃあ青をがんばって勉強したほうがぜったい良い!とか、この経費は消耗品費ね、これは絶対交際費ね!とか、いつもはだいぶぼんやりしてるのにこれをやってると気付くとはっきり人間になっていて、それはけっこう怖い。怖いと思えるだけ良いのかもしれない。これはゲームだと思わんと、これを現実ってことにすると、すごい怖い人になってしまう気がする。 
 
今のところきれいさっぱりにできたという錯覚があるから、そんなに苦じゃないのが救い。
それにしても、数字を眺めるとそのときの気分がよみがえってくる。匂いのようにつられる。ああこれは、猫亡くなってからはじめて描けた花のレシートだなとか、この絵の具はこんな気分で買ったんだったなとか、きづいたら耽ってしまって作業がゆっくりになる。
 
いや、今年は、ほんとうに腕を、ビュンビュンふりまわした。
ダブルラリアット…
を力任せにした末の、この後処理がけっこう大変で(ぜんぜん楽な方なんだろうけど)来年ダブルラリアるときにちょっと躊躇してしまいそう。
簡単にやつあたりしてしまいたくなる、小学校くらいからこういうこと教えてくれたら良いんけどなとか。絵の描き方なんかよりよほど知りたい、このぜんぜんわからんこっちの世界のこと、扉もしくは扉の前まででも良いから…!

2023-11-17

室内の曖昧さ

 

すこし前に描いた絵、「窓辺の花」
最近知った、マシュー・ウォンさんという画家の描いた絵の中に在る、美しい花の事を想って。
今日もまた同じ花の絵を描いた。この絵より窓の外は曇っていて、境界線が曖昧になるような淡く暗い室内にした。
 
 
裁縫が苦手で、針に糸を通す段階でだいたいいつもあきらめてしまう。
私の頭の中に似てる。
そういえば、いままでそんなことばっかり繰り返してきた気がする。
何かがわかったような気がしては結局わからず終いで気付けば忘れ、忘れたことも忘れて繰り返す。
私は針に糸が通らずとも平気に生きている、それにたくさん絵も描いた。
わからないことばかり増えてきた。諦めるのが昔よりずっと早くなってしまった。
これからもっとぼんやりした人になっていくだろう。
時代はそれをゆるしてくれるんだろうか。

2023-11-09

no title






1)すごくよかったごはん屋さんの犬の箸置き
2)その翌朝 家の下でアフロのカマキリ
3)そのごはん屋さんのママさんが、お店を出るときにくれたチョコレート
4)ベニエっていうお菓子
5)揚げる前のコロッケ

2023-11-04

昼間の窓

 
スケッチ/昼間
 
存在に、理由や目的は必要なのだろうか
よくわからない
いくつかを透明にして橋をかけて渡る日々のことを
肯定も否定もせずに生きていきたいとおもう

ドライイーストを買ったから数年ぶりにパンを焼いた
発酵のあいだには絵を描いて過ごした
焼きたてのパンはカチカチ言うから楽しい
夜には里芋の煮っ転がしを作った
鍋の中で転がすと里芋が照ってうれしくなった
今日は机から台所までの行き来を何度もした
 
少し前に描いたこのスケッチを見返したらとても心地よかった
手前には水バケツ・その向こうに台所の窓
 
パンが焼けるにおいや、煮物の甘いにおいが現実か空想かわからん中でまた漂ってくる
気がつけばバケツの水も窓の向こうも真っ黒
また明日、日が昇るか不安になるほど真っ黒 
ちゃんと暮れたのだから
ちゃんと昇るだろう
と言い聞かせて水バケツ洗う

2023-11-02

瓶とりんご

 

スケッチ/瓶とりんご
加筆前と加筆後

no title











(2023-10-31)
どうしても欲しいシャーペンがあって、それが銀座の文房具屋にあるそうで、そのためにまた銀座へ行くことにして、二日連続で銀座を歩いた日になった
連日出掛けててすごいから(※自分にとっては)写真を撮りすぎてるので載せます
 
銀座はいくら居ても全然見切れないというか、まったく飽きない
ショーケースのガラス越しに夢見てるみたい、眠くなる
前から歩いてくるサラリーマンは私たちが見えてないみたいにがつがつ歩く
私はぺたんこの靴で歩き回って足痛くなった
別世界だー
歩道橋から、ぎりぎり東京タワーとぎりぎりスカイツリーが見えた、ド派手だった
淋しさすら感じなくなってくるのはどういうことなんだろう
また行きたい