2023-05-01

やさしい海に


 数日間は絵を描かない方が良い気がした。
 今日は筆をいっさい持たない事にして、髪を切りに吉祥寺に。自分で適当に切った前髪をととのえて貰ったらものすごく短くなり、レオンのマチルダみたいな髪型になった。顔がナタリー・ポートマンみたいな美人じゃないので、ただ前髪切りすぎた人になった。ドライヤーしてくれる時に話しかけられて返事をしてもほぼ私の声は届かないので、へへ…くらいしか喋れない。
 
 喫茶店で「ヌスエッケン」というドイツのお菓子とアイスコーヒーを飲みながら、頂いた本の装画のお仕事のゲラをもう一度読み返した。現代の小説というものを久しぶりに読み、色々な事が頭に浮かぶ。恋愛小説だが、共感出来る点がひとつもないこと。拒絶反応すらあること。それが面白いと思った。私は私の役割を果たそうと思った。自分の視界に入ったその瞬間から、すべて自分事になる。全て私であると思った。だから出来るだけ誠実でありたい。そうでないと勿体ない気がした。頑張る。
 
 気付けば閉店時間になっていて、急いで店を出た。吉祥寺から西荻窪まで歩き、帰りがけよく行く焼き菓子店でクッキーを、パン屋で総菜パンを買った。明日の朝に食べる。明日の楽しみがあると夜も楽しいから良い。ウルトラマリンに少し肌色を混ぜたような水色と優しい桃色の夕暮れに少し欠けた月が白く光っていた。美しい夕暮れだった。ちょうどその頃、父からメールが来る。今日の朝、1月に亡くなった猫が海に帰ったと。また思い出して寂しい気持ちになる。亡くなって3ヶ月と15日くらい。まだ、波がある。けれども海に帰る日が、こんな穏やかできれいな夕暮れの日でよかったと思った。
 
 電車に乗って帰り、もう外は暗い。帰宅し、夕飯を作る。十穀米を炊き、味噌汁を作る。人参、牛蒡、豚ひき肉、コンニャク、白菜。副菜にひじきの煮物とコンニャクの甘辛煮。鰹節多めにいれておかかも作った。鶏肉のさんが焼き(風)を作る。生姜を沢山、味噌は少々入れた。大葉で包んで反面焼き、後はもう片面焼くだけ。美味しいと良いな。あと冷や奴。最近は若干健康ブームなので自炊を頑張っている。今日は早く眠りたい。なんとなく。

2023-04-29

過去は未来とともにある

 


ちょうど2年ほど前描いていたのと同じ花を選んで描いた。
この花にはやはり緑が似合う。柔らかい春の緑。
過去の自分は今の自分の中のどこにもいなくなってしまったなと、そんなどうしようもない事を少しだけ侘しく感じた時があった。その花を描いていた時の心情や背景は生々しく身体が憶えているというのに、どうしてもあの時のように描く事はもう出来ないのだった。
 
この花を描いていてまた、2年前の事を思い出す。
当時はこの花にえらく苦戦して、やたら時間が掛かった。花が妙に眩しく見え、それを描くのが難しかった。描写すればするほど気持ちの悪い絵になるので、塗っては消して塗ってを繰り返した。 

今回はというと、花を買ってきて二日で描き終わった。 時間にすれば5時間くらいだろうか。
そこに咲く花は私の心の投影ではない。まぼろしではなく、目の前で咲いている。だからか今はまったく眩しく感じない。私はこの眼で観察をしたい。
 
 今日は、何故だか侘しさを感じない。 
むしろ、安心感をおぼえた。うまく言葉に出来ないが、分かったような気がする。
さっき山村暮鳥の詩を知って、それがあまりに自分の心に近いので、少し驚いた。
 
 
「自分は光をにぎつてゐる」 
自分は光をにぎつてゐる
いまもいまとてにぎつてゐる
而もをりをりは考へる
此の掌をあけてみたら
からつぽではあるまいか
からつぽであつたらどうしよう
けれど自分はにぎつてゐる
いよいよしつかり握るのだ
あんな烈しい暴風の中で
掴んだひかりだ
はなすものか
どんなことがあつても
おゝ石になれ、拳
此の生きのくるしみ
くるしければくるしいほど
自分は光をにぎりしめる

2023-04-27

鳥の死骸と絵筆

 



最近は起きてすぐに夢を忘れているような気がする。今日も忘れた。 
時間が経つのが怖いと思ってしまう事、いつかやめられるだろうか。

連絡と梱包をして外出。外の方が暖かい。
バサ、と音がして見上げると鷲みたいに大きなカラスが頭のすぐ上を羽撃いていた。羽広げるとあんなに大きいのかと驚いた。横を見ると狸みたいに大きな猫が住宅街を通る。いや、狸かもしれない。こんな都会の住宅街で彼らはどこで眠っているんだろう。
 
郵便局と花屋に行って、帰りには夕暮れ。
最近のこの時間帯はオシロイバナのにおいがする。自転車で走りながら見えた景色の中に美しい野草。いつか切り花ではない花や木や植物を描いてみたい。今はまだ出来ない気がする。 出来ないというか、怖い。そんな事を考えながら家に向かうと、鳥が食われて死んでいた。僅かにのこった肉の間から血と骨が見えた。さっきの狸かカラスが食べたのかな、なんて考えた。見たくなかったものを見た。忘れたいと思った。

夕飯のために米を炊く。今日は十穀米にしてみる。味噌汁に芋、人参、牛蒡、玉葱、炒めた肉を入れる。副菜で小松菜と油揚げの煮浸し。あとは鮭を焼く。

2023-04-26

おしらせ・絵をかざってもらいます

 


 
東京・高円寺にあります そぞろ書房さんにて開催される短歌の展覧会で、最近描いた絵「星の散歩」シリーズ3点を展示・販売させていただくこととなりました。

「そぞろ書房」さんは、点滅社さんと小窓舎さんが運営する、あたらしい本屋さんです。
うまく言葉で表せませんが、関わる皆様の事が大好きで、尊敬しています。だからこうして関われる事が、光栄で嬉しいです。
そしてこれからどんな本屋さんになるのか、とても楽しみでもあります。
 
SNSで募集したという「すこしさみしい短歌」約250首(!)も展示されます。
私の描いた絵は今回とても少ないですが、短歌がお好きな方、お近くの方はぜひ、遊びにきてください☺︎
展示する3枚の絵はポストカードにもする予定です。
 
●場所:そぞろ書房
〒166-0003
東京都杉並区高円寺南3丁目49−12 セブンハウス 202号室
●会期:2023年5月3日-7日
●時間:14時-20時

2023-04-22

no title

 
 
昨日は夏のように厚かったのに、今日は寒い。
午前中に新宿に行った。駅前には大勢の人がいる。
一人、サングラスをかけた男性が何か喋っている。
怒っているように何かを訴えている。警察は談笑している。
私は男性を少し見て、通り過ぎた。
人々は穏やかな海の波みたいに、ゆっくりと動いている。
先日期日前投票に行った時に、感情が一切揺らがなかった(名前を書く所から、投票するまですべて、<無>だった)のに少しだけびっくりして、それを思い出して歩いていた。
銃声や爆発音が、最近何度か夢に出てくる。  
みんなきっと、必要なものしか必要ではないだろう。
じゃあどうしたら良いんだろう?分からない。