昨日、日が高いうちに描き始めた絵が、暮れてきてよくわからなくなって、使わないようにしようと思った黒い絵の具を我慢できずパレットに出してしまって、もっとよくわからなくなってやめた。黒は呪いのようだとおもう。どんなに重ねてもしぶとく黒が透ける。明るい色を重ねても重ねても濁るだけなので、今朝その絵をあきらめて捨てた。捨ててもずっと頭の中に黒が残る。
高校生のころ友人とふたりで岡山に旅行に行ったことを時々思い出すけれど、今晩もひさしぶりに思い出した。だいぶおぼろげになって、半分夢のよう。
岡山へは小野竹喬の絵をみるためにはるばる向かったが、美術館には数点しか彼の絵がなく、拍子抜けした。ほかにどんな絵を見たのかさっぱり覚えてない。美術館を離れ、適当な駅で降りた。がらんとした無人駅だった。全然電車がこないから、友人はホームのはじっこに脚をぶらぶらして景色を眺めていた。なんとなく駅を離れ、街を少し散歩して、そこはとても静かで好きな場所で、また来たいなと思った。二度と来ないだろうな、とも思った。
その場所をGoogleマップで検索をかけたら、思い出と同じ景色がそのままあって驚いた。水路にたくさんわいてたジャンボタニシだけいなかった。
その友人は高校生活のうちいちばんよくしゃべった気がするのに(岡山まで行ったし)連絡先も家庭のこともなんにも知らず会話も全然おぼえてないし、高校を卒業してからは一度も連絡を取ってない。彼女の描く絵は好きでずっとおぼえているけど、彼女自身の存在について思い出すとぼんやりしている(生きていたから作品が出来たんだけど)。ときどき夢に出てきてくれたとき、いつも彼女はケガをしていて、それを私は毎回心配していたが、治癒もなんもできなかった。いまどうしてるかなと夢を見るたび思っても、一度も連絡を取ろうとしない。なんでなんだろう?
当時、彼女が今日も生きてるだけでちょっとうれしかった。今日も生きててくれたらうれしいなと思う。