桜と耳たぶ

 
 

桜が散りまくっている。
もったいないとは思うけど、さみしさは感じない。地面は雪が降ったように白い。昔から桜は好きじゃなかった。特に理由もなく。でもここ数年は桜を見るたび猫の耳たぶを思い出してしまって、思わず見てしまう。でも別に桜が好きというわけでもないんだろう。どんな桜の花びらよりも、猫の耳たぶのほうがやわらかくかわいかったし。

(桜のある風景の断片)
  • 先日、風のない生温い静かな夜に、桜の木の下で自転車を停めた。見上げると、桜の木と花が、神々しく、青白く光ってた。
  • いつか川越に、そのとき仲良くさせてもらっていた絵描きの友人たちと桜を見にいったことがある。桜というより白いかたまりが、風が吹くたび、ドッ!!!とくずれていく様子が、凄まじかった。そのときはたしか、親知らずを抜歯した直後だった。だから口の中でずっと血の味がしていた。
  • 家の窓から見える桜は、空想みたいだ。少し泣きそうになる。なんでだかはわからない。

 
 
おかまいなしの音楽は
どこにでも無断でついてくる
だからおかまいなしの音楽は
おかまいもされずに好かれてる