2023-02-03

空想の窓辺・本について

 



本「空想の窓辺」のことについて少し書きます。最近はお知らせ続きになってしまってすみません。
展覧会でお求めいただけますが、ウェブショップでも販売を開始してみました。こちらでお買い求め頂けます。 (発送まで時間を頂くことがあります、お急ぎの方は展覧会会場にてお求めください)
 
現在開催中の展覧会「空想の窓辺」に伴い、同タイトルで本も刊行しました。
こちらの本は、いつもお世話になっています、デザイナーの浦川彰太さんと制作しました。
限定150部・糸綴じ(手製本)・ソフトカバー です。表紙の色が、朱と青とあります。内容は同じです。ただ今背骨さんにて展示している10枚の絵がすべて収録されています。
また、本の中心のページには、詩人・北村太郎さんの詩「犬の日々」が掲載されています。
 
 
余計なことかもしれませんがもう少し。 内容について書きます。
収録されている10枚の絵は、すべて同じ場所を描いています。その場所は、心の中にあった(ある)空想の窓辺。
描いた時期は、昨年の夏から秋頃だったか。10枚描き終えてから、この窓辺を描いてません。
窓辺から見える景色は心の奥のほうの心象風景なのか、それとも見たい景色なのか、心の眼でみた現実の世界なのかは、自分でもよく解りません。
いつも夕暮れで、名のない黒い山々が連なり、しずかです。そこで絵を描いたり、花を眺めたり、古い壷やからっぽの花瓶を置いてみたり(それらは背骨さんで実際に買ったものです)、オオミズアオといううつくしい蛾とあそんだりしていました。
(こんなにきれいなのにもう、暮れてしまうなあ)なんて感傷に浸っている事が心地よくて、いつも夕暮れにしていました。
掲載された絵の順番は描いた順番でもあるのですが、後半へすすむにつれて覆われていく窓が、自分でも不思議です。逃避してもなお逃避したいとのぞんでいるのだろうか。もう夕暮れなのかもよくわかりません。
 

折返し地点でもある真ん中のページに貼られた「犬の日々」は、私の大好きな詩です。
窓辺の絵を描いているときに北村太郎さんのこの詩に会い、その美しさにうっとりとしました。
発表する事があるのならこの景色とともにならべたいな、と烏滸がましくも考えた事が発端となりました。
掲載許可をいただくにあたり、協力してくださった思潮社の小田康之さま、快く許可してくださったご遺族の方々へ、感謝の気持ちでいっぱいです。
 

製本についても少し。
デザイナーの浦川さんとたくさんの打ち合わせを経て本の設計をして頂き、一緒に本を作りました。紙を決めて発注して、折り、穴を開け、糸で綴じる。糸で綴じる…。
それから、別で印刷した10枚の絵と詩をそれぞれ貼り、最後に断裁。などなど。
本作りってものすごい…ものすごいですね。(!)
当初はひとりで制作しようと思っていたこの本、うまく言葉にできませんが、浦川さんにお願いして良かったなと心から思ってます。ひとりでやっていれば糸綴じという選択も表紙の色を2色という発想も無かったと思います。使った紙の種類もそうですね。
絵の世界での100点満点と本での100点満点って全然違う次元と言いますか、とにかく、ちがうんだなと気付いてから、本を作るという行為を(とくに完成した絵を本におさめるという行為を)難しく捉えていたのですが、それを伝えたうえ、共に考えていただいて、ゼロから本に向き合えたのが嬉しかったです。それに、楽しかった!(まだ製本作業は続きますが。)
 

近況を最後に少し。
この記事をアップするためにカメラの写真を見返したら大好きな猫がいっぱい出て来て、数日ぶりにぼろぼろに泣いてしまいました。抱えきれないぐらいの大好きな気持ちが心に在り続けて、寂しさは永遠に消えないだろうと確信します。
今朝ゴミを出しにいった時の空気のなかに、なんか居る気がすると思ったのは何だったんだろうと考えます。
この身体はどうやったって不在と寂しさばかりを感じる作りになっているようで、浅はかに涙が溢れてしまいます。けれど本当はすっかり居なくなるなんて事は出来なくて、(それは絶望でも希望でもあるのだろう)事実、変わらず地球の一部として生き続けているのだから、どこにでも居るんだろうな、あとは自分が何を信じるか、それだけなんだろうな、と。
涙も笑いもない空想の窓辺で感傷にひたるのもよかったけれど、今は泣きたいし笑いたいし嘆きたいし散歩がしたい、という心持ちです。
…けれどもこうして本が出来て、展覧会を開かせて頂いて、見て頂いて。
この空想の窓辺へはいつでも帰れるという事が、確固たるものに変わり、今大きな支えになっているような気もします。
 とくに背骨さんでの展示は額から作って頂いて、絵が本当に窓からみえる景色のようで、妙に感動させられてます。
 
少し、少しと言いながら結局長い文章になってしまいました。
皆さんいつもありがとうございます。
ご縁あれば、展示でも本でも「空想の窓辺」に来てくれたらうれしいです。

市村柚芽