角の丸い三角形の雲が浮かぶ秋晴れの日、自転車を押して歩いていた。目的地は何かの祭りをやってる高架下。小学生の時の同級生・少しヒステリックな側面を持つミナミちゃんと待ち合わせていた。ミナミちゃんは徒歩だったから、私は二台持っていた自転車を貸してあげて、二人で自転車を押しながらえらく長い高架下を歩いた。ふと見上げると、空がおかしなことになっていた。壊れかけた機械のように空の水色が急に真っ白になったり、雲がすごい勢いで上がったり下がったりしていた。空がそんなことになってるよとミナミちゃんは教えてくれた。私はいつも、夢の中の空が不穏だと物凄く不安になる。今回も、もうじき地球は滅亡するんじゃないかと感じられた。怖かった。だから早足で高架下に向かった。祭りは人で溢れていて、道路は自転車で埋め尽くされていた。駐輪場は当たり前のように満員だったから、ふたりで道路に停めた。
高架下はとても長かった。私はカメラをさげて、ふたりで高架下のはじっこを目指して歩いた。はじめはただの高架下だった。ゴムの道(ゴムでできたみたいな道の事をこう呼んでます)、コンクリートの道を経て、急に地下の駅のホームになった。そこが一番混雑している場所だった。人混みが嫌で走って進むと狭い廊下に温泉街があった。そこも通り抜けると急に列車の一番はじっこの車両にいた。そこから見える夕暮れの景色が美しくて、シャッターを切った。まばたきするごとに変わる車窓の景色。涙出そうになるくらい綺麗な夕暮れ。ずっと見ていたかった。地球が終わるときの夕暮れだから綺麗なんだろうな、と思った。ミナミちゃんはそろそろ帰ろう、と言う。わかった、と返して来た道を戻る。この人混みの中、殺人事件があったみたい。駅のホームでたくさんの警察がバタバタしている。犯人が見つからないとの事。殺される前に帰らねば、と私たちは急いで高架下を抜ける。さっき停めた場所に自転車がなくなっていた。誰かが駐輪場に移動してくれたのかもと思って、暮れかけて少し暗い中で自転車を探す。向かいに自転車を回収する警察たちのオフィスがあった。ああ
、違法駐車していた自転車はみんな回収されてしまっていたのかと納得。警察署は自転車の違法駐車の対応に加え、殺人事件の発生で建物外からでも混沌としているのが分かった。警察の何人かが窓から飛び降りて死のうとしていた。多分おかしな空も関係しているのだと思う。なんか気が狂いそうな天気をしてる。怖くてバスで帰ることにした。バスの窓はガラスが全部割れていて、通りがかりの知らぬ人みんなに声をかけられる。つぶれたおにぎりが余ったから貰いませんかと話しかけて黙っていた。怖くてしかたがなかった。ああ、明日と明後日は予定があるのにいつ自転車をとりにいこうかなと考えたところで、起きた。
高校生の時のある朝に、満員電車で怒鳴り声が聞こえた。その声はミナミちゃんだった。小学生の頃とあまり変わらずかわいい顔のミナミちゃんだった。私はその時、なんだかとっても心配になってしまった。
ごめんね、って思ってる。
理由はわからない。
あれから一度も見ていない。
元気だといいな。