長いのに速い毎日。
気づかないうちに数え切れないさよならがあったと思う。
寂しさにも気づかない速度。
新しい家では本が読めた。
きっと大好きな家になる。
高校生の頃、団地からマンションに引っ越したとき、しばらく落ち着けなかった。わざわざ書き留めもしないようなささやかな思い出たちでも、忘れるのが怖くて、上書きするのも悲しくて。不安だった。団地の周りに子供の心が漂っていた。幽霊みたいに。
20代前半までは、そんな心を引きずってか、断ち切れなくてなのか、後ろを振り返る絵ばかり描いていた。今は、さよならができてなくても気づけてなくても、私も荷物と一緒にちゃんと運ばれてきた気がする。手放したくないものたちを、手放していきたいとも思う。
少し前、中野真典さんの展示を見に行った。
DMをいただいて、『花守り』 という展示名と絵がずっと心に残っていた。
中野さんの花を見る視点は、自分のそれより、遠く遠くにあった。それはわかっていたことだったが、思っていたよりはるかに遠かった。
いつかそこに行こうとか、ついていこうとか、そういうことは、思わなかった。ただ純粋に、感動する。これまでに描いてきた花たちのこと思い出しながら眺めていて、ありがとうと思った。