なんでもない日

今日も、なんとなく日記を書いてみる。
 
起床。
顔にべっとり花粉がついているような気がして、猛烈に洗う。
湯を沸かしつつ、身支度をすませる。
黄土色のシャツと、青みがかったグレーのロングスカートを着る。
青い陶器のイヤリングをつける。
いつもより色がある。
春が近いからか、そんな気分だった。

昨日製作した、「琥珀糖」の経過を観察。
昨日の夜から、朝になるのが楽しみだった。
少しだけ、表面がパリッとしてきたような。
これは、結晶化してきたってことなのか。

紅茶を淹れ、ビスケットといっしょにいただく。
郵便局へ向かう。
香川の本屋さんへの発送をすませ、
青森の本屋さんに送る荷物に使う梱包材を買う。
郵便局の向かいにある和菓子屋さんで苺大福を買って家に戻る。
 
帰宅し、洗濯物を干す。
パソコンの前に座る。
自転車を漕いでいたとき、今日は日記を書こうと思った。
それで今、こうして打っている。
 
次は夜、追記する。
 
 
昼過ぎ、お世話になっている本屋さんへ向かう。
ここはずっと前に、初めて個展を開いた場所。
今はそこが本屋さんになった。
差し入れに苺大福を渡す。
尾形亀之助さんの『美しい街』という詩集を買う。
少しおはなしさせてもらう。

帰宅して、おやつに肉まんを蒸す。
描きかけの絵を進める。
小さな花の花びらがどうしてもうまく描けず、日が暮れてしまった。
うまく描けないと、知らぬ間になげやりになっている。
絵の具が乾いていないのに上から重ねてしまったり、水が濁っていたり、パレットが色で埋まっていたりする。
とにかく落ちつかなければだめだと、
絵の具の乾くのを待つことにした。
その間に、『美しい街』を開いて読んでみた。
この詩が、目に留まった。


「うす曇る日」
 
私は今日は
私のそばを通る人にはそっと気もちだけのおじぎをします
丁度その人が通りすぎるとき
その人の踵のところを見るように
 
静かに
本のページを握ったままかるく眼をつぶって
首をたれます
 
うす曇る日は
私は早く窓をしめてしまいます
 
 
読まずにとっておいた『双紙いのちかたり』も開いてみる。
森友学園問題でお亡くなりになった赤木俊夫さんの命日である3月7日に、妻の赤木雅子さんの願いが叶うことを願い、小熊昭広さんが制作/発行されたもの。 
小熊さんは、宮城で活版印刷所を営まれている。
その本の中に掲載されている、熊谷麻那さんの文章に添える黒い丸を担当させてもらったご縁で、数日前に実物をいただいたのだった。
 
先月宮城へ行ったとき、小熊さんの活版印刷所へ、熊谷さんにくっついて訪れた。
そのときの光景や感じたことは、あまり言葉にして残しておきたくない。
多分、熊谷さんに対してもそう。
自分でもよくわからないけれど、大事な感情がある。
尾形亀之助さんの詩集を買ったのも、小熊さんと熊谷さんを思い出してのことだった。
 
『双紙いのちかたり』のことも、あまり言葉にしたくない。
わからないが、今回もまたそう思った。
ただ、この本から漂うインクのにおいが、活版印刷所へ訪れたときと似たような、胸がぎゅっとするような感覚になること。 
それも多分、大事なもの、なんだろう。


忘れたくない大好きな存在や景色がある。
けれど、それを強引に引き止めることなど
きっとしなくていいんだろうと思わされる。
そいうことが、ここ最近、よくあった。
 


なんにもない、と言えば、
なんにもない1日だった。
なのに、気付けばとても長い文章になった。
 
 
今日は3月11日。
これは追悼なのだろうか。
 
わからない。
おぼえておきたいから?
 
多分、ちがう。
でも、よくわからない。
 
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さっき完成した絵。
すこし前まで蕾だった花が咲いてきた。
絵の中で、雪が降りだした。