夜、帰りの新幹線にて
宮城へ行ってきた。
新幹線がとても早くて距離感がわからなくなったり・暖冬で雪がなかったせいかもしれないけれど、東京から300キロ離れたそこは、肌なじみがよかった。
大きな山があった。ごつごつした川辺がたくさんあった。きれいな水があった。太陽がずっとまぶしく、空をあまり見られなかった。ひんやりした気温の中でいい風ばかり吹いた。
たった3日の滞在でその土地のことがわかった気になるのは安直すぎるのだろうが、思い出すと崖っぷちに立ったようにひやひやする。あの場所が失われたらとても悲しい。そんなふうに思うのにびっくりした。
友人にくっついて、活版印刷をしている工房へ伺った。そこでは文字に重量があった。文章を書くという行為があまりにも物理的で、それにすごく安心した。ずっと読めなかった活字が、久しぶりに読めた。
友人が生まれ育った故郷を歩いて、心がざわざわとした。彼女が持つ原風景のようなものと私のそれは、その距離通りの遠さなんだろう。どんなにたくさん喋っても、根はそれだけ遠い場所にあること。一緒にいて全然つかれないから、それが少し淋しいような気すらしてしまった。
会いたい人や行きたかったお店も行けて総じてとても楽しかったけれど、この淋しさはなんなんだろう。また訪れたらいいのだろうけど、そのたび増幅しそうで少し怖い。本当にきれいな景色を見た。私はああいう(風景画を描きたいという訳ではない)絵をいつか描きたい。
それにしても、新幹線は本当にすごい。一人で新幹線に乗るのが初めてで、とにかく緊張して余裕なく乗車したのだけど、座ってしまえば二時間くらいぼやっとしているだけで着く。最近はチケットも必要がないらしく、ICカードをピッとするだけで自分の最寄りから宮城に着く。実際、今住んでいる場所(都内)から渋谷へ行く方がずっと疲れるし遠い感じがする。距離を数字で見れば、300キロ。ずいぶんと遠いのに、近かった。
東京に着いて新幹線から降りたとき、その乗り物の宇宙人のような造形に驚いた。イルカとウルトラマンを混ぜて巨大化させたような姿。そりゃ新幹線はすごいわけだと何か腑に落ちた。