2022-12-03

覆われた窓



ドリップバックからしたたるコーヒーの粒をみていた。
コーヒーの水滴が、落下する時には丸くなり、消える。その繰り返し。表面張力の威力はとんでもないものだっていつか聞いたが、生まれてから消えるまでのその早さが、なんか呆気なく思って笑えた。
新しい絵を描こうと思って、ブロックタイプのスケッチブックから昼出来た絵を破れないように慎重に剥がした。剥がしている時、急にその絵を憎らしく思い、破りたい気持ちになった。さっきまで惚れ惚れしていた絵である。なんというか、ここで本当に絵をビリビリに破いたら、ちょっと狂人っぽいというか、これをやってしまったら私はダメになるんじゃないかと思い、破りたい、と思うだけに留め、ファイルにおさめた。いつも絵が完成すると、突き放されたような気持ちになる。なんだか今日はいつもよりもとても淋しく、くたびれた。
空想の窓辺から望めた山や美しい夕暮れは草に覆い隠されて何も見えない。
 
それから、描けないまま暮れた。
あんまりな一日だったから、こうして文章を書いてみた。空っぽさに驚いた。
 
優しさについて話した。
Yさんという、とても優しい人のトークショーの録画映像を見ていた。優しさとは何なのかなんて、もう、もう本当に分からない。言葉にもしない方がいいような気がする。しかし自分は優しさとはほど遠い人間だということは、確か。ただ歩くだけで色々なものを傷つけているような気がする。それを自覚しても全然やめる事が出来ない。
私のする事は全て、私の為にしかならない。祈る事しか出来ない。良い人になりたいとも最近は思わなくなった。