ジャムのコーヒー


よく行く花屋さんで黄色いチューリップを買ったら、2輪おまけしてくれた。
チューリップ1輪だけの絵を描こうとしていたが、チューリップは2輪単位で売られていた。気づくと手にはチューリップ4輪。
嬉しい気持ち7割と絵が倍の倍むつかしくなってしまったという気持ち3割で、心の中散らかしながらありがとうございますと言った。
母からの誕生日プレゼントでもらった友部正人のエッセイ集を喫茶店で読んでいたら 
一瞬だけ、何10歳か年を重ねた自分になった気がした。23歳の私に戻ってきたら、これも一瞬だけ、今抱える悩みなんかがふっと軽くなって、すべてすぎさった甘酸っぱい思い出のように捉えられた。
(甘酸っぱかったのはジャムとクリームの入ったコーヒーを飲んでいたからかもしれない。そのジャムのコーヒーはおいしかったけど、苦手だった。)
花の絵を描いている間に、花は次々に枯れていった。枯れた花を捨てるのが中々出来なくて、水のない花瓶のなかにしわしわな花がずっと入っている…、
でも、枯れたチューリップの花弁はりぼんのようで、それはそれできれいだった。