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きのうで、個展「窓辺の肖像」がおわりました。
前の展覧会とはがらっと空気が変わり、初夏の澄んだ空気を連想させる空間になりました。
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ノストスブックスさんはアート・ブック中心の本屋さんで、年代/性別/画材、問わず、とにかくいろんなかっこいい絵が収録された本やかっこいい本、美しい本、がたくさん売っています。知識が乏しい自分はそれぞれの本の稀少さや作家の偉大さに気づかないままなげやりに眺めることができ、この絵は好き、こっちはなんも興味がない、とか、これは絵より造本が気になるとか、ていうかこれなんの紙使ってるんだろう、とか想いを巡らせたりして、時々楽しませていただいていました。
そんな、サンドバックにもできちゃうくらい強固な、またちょっと泣きそうになるくらい膨大な、芸術の歴史がぎゅっとした場所で絵を飾らせてもらうのはどんなふうになるだろう、と始まる前から興味深かった(言葉を変えれば不安でたまらなかった)のですが、こんなふうになるとは、よかったです。いい意味で存在感がなくて、いや、存在感がないというより透明に在る感じ..幽霊感がありました。そう思ったのは自分だけかもしれませんが。
最近の展示は毎回お葬式みたいだと思っていましたが、なんと今回それがありませんでした。幽霊なのに。幽霊だから?ふしぎです。
全部の時間がそこにあるような感じもしました。絵は、額のおかげもあって本物の窓のようだったし、本物の窓も大きかったし、風通しがよかったからかもしれません。
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うすぐらいところへ隠れがちな自分にとっては、ひらけたこの場所は外のように明るくからっとしていて、在廊していたときはいつも以上にもじもじしてしまいました。相変わらずどのように立ちふるまったらよいか分からず、じっくり観てくださった方に挨拶もできぬまま帰られてしまい、その後ろ姿をみて(ありがとうございます..)とつぶやくばかりでした。すみません。
絵は自分のために描こうと決めて(断言するようなことじゃないけど、それだけはゆるがないようにしたいです)、だから人がわたしの絵を見て楽しんでくれるか分からなかったのですが、観てくれた方が感想を伝えてくれたり(対面でも芳名帳での感想コーナーでも)長い時間観てくださる方がいて、安心します。
どのように社会と共存するかを自分なりにずっと考えていますが、これでいいのかもしれないと思わせてくれました。..というより、いつも少しずつ忘れて、忘れたころに展示をやって、みなさんに思い出させられています。その繰り返し…。そうやって生きていったらいいのだろうな。ほんとうに感謝しています。
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今回も、額を古道具・背骨さんにお願いしました。
1枚1枚絵を見て、デザインや素材を考え製作してくれました。一緒にノストスブックスさんへ赴き、その空間や質感も考慮してくださいました。こんなに楽しいことがあるでしょうか。
巨大ポスターはノストスブックスさんとデザイナーの浦川さんが作ってくれて、それもこの展示を象徴する、かさっ!ざざっ!とした、軽い質感を持っています。
絵がほんとに完成したとき、描き手も一緒になって鑑賞することができるのかもしれない、と思いました。弔いのようでもありますが、灯籠流しみたいに、すっきりした思い出です。
みなさま、どうもありがとうございました。