つらくなったとき 地下室に降りて行って
天使に会うの 天使をかくまってるの
きれいなものは外で こわされそうで
天使に会うの 天使をかくまってるの
きれいなものは外で こわされそうで
. . .
ちいさな頃、母と父がそれぞれの子守唄をうたってくれたときの声を頭の中でまた聴いた。
ある地点から遠ざかると、その時にはずっと続きそうだと思っていた長い線が たったひとつの点のように見える。地続きだった記憶たちは日付が失われて、ただの断片となる。いくつもの断片はつなぎあわせても多分もう線にはならない。
わたしは何に怒っていたのか。何に悲しんでいたのか。その肝心なところを、きっとわたしは二度とわからない。
それでも聴こえた歌声は、思い出の歌は、やさしい毛並みの触感は、廊下に反射した西日は、どうしようもなくつらかった気持ちは、思い出そうとしなくても、今でもはっきり、きっとそのときと同じように残っている。