八百屋さんで野菜を買って、お肉屋さんでお肉を買って、珈琲屋さんで珈琲豆を買って、リュックも手提げもパンパンにして、自転車でひゅうと帰った。少しだけゆとりができた気がして、商店街まで買い出しに行けた、ひさしぶりだった。
自転車に乗っているあいだにぽんぽんと浮かんでくる考え事はいつのまにか妄想に接続されて、妄想の中の結論が確信みたいになってくる。少し狂っている。最近花を描きすぎたのか。
空を見たら、雲のはざまから光が神々しく射して、縞模様になっていた。内部の不穏とは全く関係のない風景に安心させられる。
 
家に帰ったらすぐに耳をふさいで、買ってきた野菜を茹で、ひじきは煮た。ほうれん草は熱湯にいれるとすぐ鮮やかなみどりになって、見とれていたら茹ですぎる。数時間台所に立って、ひさしぶりに耳を開けて、送ると伝えてあった荷物に同封したいお手紙に、どんなことばをつかったらいいか考えた。全然わからない。こんなに騒がしいのに出てくる言葉はぜんぜんない。
おおきな入道雲は見るのより描くほうが好きだ。うまく描けたことはないけれど、不安を言葉にする前に雲となって浮いてくれるようで楽になる。